エルマーはめげない
2023年夏、「エルマーのぼうけん」展に出かけました。
展覧会にあわせて、事前にシリーズを再読しましたが、なにぶん、小学生以来のことなので、30年もの時を経て、読んだことになります。
読み返して感じたことは、登場人物が“誇張”されていないこと。アメリカの出版物でありながら、いい意味で親近感がわいて、“自分”のストーリーとして自然と受け入れることができます。
例えば、ぼうけんのきっかけとなる猫のキャラクターに対するエルマーの母親の最初の対応ですが、「猫にあげるミルクはない」と追い出してしまう始末。子どもが飼いたいと切願していても、です。
一般的な(というよりも私が考える)絵本ではそうはならないような気がします。たとえ追い出すとしても、「うちでは一緒に暮らす余裕がない」といった外的要因を作り、各キャラクターが悪く見えないようにするのではないでしょうか。
それだけではありません。りゅうの子がとらわれている「どうぶつ島」で暮らしている動物たちは、実に性格が悪い。読んでいるこちらも気分が随分と悪くなってくるほどで、「人間にもこういう人がいるなあ」と思わされるほどです。
だからこそ、エルマーが動物たちを「出し抜く」シーンには爽快感があります。私のような子を持つ親としては、エルマーに「すごい!」と称賛の声をあげたくなるほどに。
真実の伝え方
一方、親を持つ身としては心配にもなります。
果たして、これほどまでに動物たちを悪く描いていいものなのか…。
でも、その答えは幼い「私」が知っていたのだと思います。その真実味を子どもながらに感じ、恐れ、そうしてエルマーを応援し、また自らも冒険に出たいと感じていたはずです。
子どもだからではなく、誰もが面白いと思えるから子どもも大人も面白い、と感じるストーリーなんだと思います。
子供に慮った結果、子供を善意で騙そうとし、その浅はかな偽りを子供に見透かされ、「この作者は何もわかっていないな」と子供が興ざめされてしまう作品になってしまうのかもしれません。
あるいは「勉強になるだろう」と大人が喜ぶ絵本を子どもに渡してしまえば、「騙せると思ったかい?」と子供に心配すらされてしまうかもしれません。
子どもはどんな気持ちで読むのだろうか
いつか文字が読めるようになったら、自分の子どもにもぜひ読んでもらいたい。
感想を聞くことは野暮なことだけれども、やはり、読んだのなら感想を教えて欲しい。
エルマーは自分の成長を感じさせてくれる素晴らしい本だと思います。
冒険に出かける前に
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