【ホビットの冒険 上】ファンタジーはいくつになっても楽しい

『ホビットの冒険』は「本当のファンタジー」です。子どもだけでなく、大人も心から楽しめる作品です。おっちょこちょいなホビット「ビルボ・バギンズ」を心から応援したくなる、そんなストーリーです。


成長をそばで感じられる物語

面白い児童文学とは、子どもが「自分の目線」で楽しめる物語だと思います。さながら追体験をするようにして物語へ自身を投影できる奥深さを持ち得る作品です。

『ホビットの冒険』はまさに面白い児童文学でありファンタジーです。ファンタジーとは、魔法や文明などを題材にしたものだとも考えられますが、何より重要なことは世代を問わずに「自分の目線」で楽しめることだと思います。魔法はそのひとつの手段ではないでしょうか。

私はホビットたちと冒険を供にする目線ではなく、彼らを応援する楽しさを感じながら読み進めています。きっと子どもならば、ビルボと供に冒険を楽しむのではないでしょうか。

「子供だましではない」。これこそが『ホビットの冒険』のストーリーの芯です。子どものころに読めば、人生の指針になるような力強い物語です。

残念ながら私は映画だけで満足してしまっていましたので、子どもが文字が読めるようになったらぜひ読んで欲しいと感じます。

『ホビットの冒険 上』のあらすじ

「ホビットの冒険」は、J.R.R.トールキンが書いたファンタジー小説です。1937年に出版されたので、刊行から90年近い年月を経ています。「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」の前日単でもあります。

少しおっちょこちょいだけれども、冷静さと冒険心を持つホビット「ビルボ=バギンズ」が、魔法使いのガンダルフの“楽しい策略”によってドワーフたちの旅に「なし崩し的」に力を貸す場面から始まります。

ドワーフたちの旅の目的は、ドラゴンのスマウグに奪われていた王国と財宝を奪還すること。ビルボ、ガンダルフと13人のドワーフたちとの旅路には、ゴブリンやトロル、クモが潜む「危険な森」などの様々な困難が行く手に待ち受けています。

「ホビットの冒険 上」は、キャラクターの成長や友情を味わえるだけでなく、きめ細やかな描写で、手に汗を握るような場面を具体的に想像できるところもまた本書に入り込める大きな要素です。

がんばれ!ビルボ・バギンズ!

『ホビットの冒険 上』における最大の魅力のひとつには、ビルボ・バギンズがドワーフたちから徐々に信頼を勝ち得る「成長ぶり」があげられるのではないでしょうか。

ビルボの成長には、大きな要因があります。それは、自身を奮い立たせて危機に立ち向かうこと。ビルボは「やけばち」に局面に立ち向かうのではなく、一種の責任感とともに自身を信じる力を強くしていきます。

私はここに「本当のファンタジー」を見ます。「勇気を持とう」「自分を信じよう」という直接的なメッセージではなく、ビルボを見ていると自然と自分を信じてみたい気持ちを覚えます。本当のファンタジーとは、文字通り魔法をかけてくれる作品です。

ビルボが悩み、諦め、あるいは周囲からのプレッシャーを感じながらも、それでも何とか前進していこうとするからこそ、心からビルボを応援できるのだと思います。人種こそ違えど、まるで日々の私たちをそこに見ているようです。

ファンタジーは時に勧善懲悪を良しとし、作者のメッセージが透けて見えて、うんざりすることがあります。もちろん、本書の作者であるトールキンもまた、文学の研究者なので、少なからずのメッセージはあると思います。

しかし、『ホビットの冒険』には紛れもない真実があります。文中に「運がむいてきた」という表現がよく見られますが、この運こそが真理です。世の中の出来事は、運が向くかどうかが成否をわけることが多々あります。万能な魔法だけでなく、運が描かれることで「魔法」が活きてくるのではないでしょうか。

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