『ビジョナリー・カンパニー』(原題:Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies)は、ジム・コリンズとジェリー・I・ポラスによって書かれたビジネス書で、持続的に成功を収める企業の特性を探るために書かれました。
この本は、長期間にわたり卓越した業績を維持し続ける企業の共通点を明らかにすることを目的としています。
あらすじ
『ビジョナリー・カンパニー』では、アメリカの著名な企業の中から特に優れた業績を上げている会社を「ビジョナリー・カンパニー」と呼び、その成功の秘訣を徹底的に分析しています。
著者たちは、一般的な企業との比較研究を行い、ビジョナリー・カンパニーが持つ特有の習慣や戦略、文化を浮き彫りにしています。
ビジョナリー・カンパニーの特徴
- 核心的イデオロギー:
- ビジョナリー・カンパニーは、時代を超えて一貫した核心的な価値観と目的を持ち、それが会社の文化の土台となっています。これらの価値観は、短期的な利益よりも長期的な理念の追求を重視しています。
- 大胆な目標:
- ビジョナリー・カンパニーは、壮大で挑戦的な目標(Big Hairy Audacious Goals、略してBHAG)を設定し、組織全体がそれに向かって努力する文化を育んでいます。
- 進化と改善:
- これらの企業は常に進化し続け、革新を追求しています。変化を恐れず、むしろそれを成長の機会と捉えています。
- 試行錯誤の文化:
- ビジョナリー・カンパニーは、新しいアイデアやプロジェクトに対して積極的に試行錯誤を行い、失敗から学ぶ文化を持っています。
- 優れた人材の重視:
- 人材の採用と育成に力を入れ、組織全体が成長し続けるための基盤を築いています。
事例と比較
本書では、具体的な企業の例を挙げながら、成功を収めた企業とそうでない企業の違いを比較しています。例えば、ウォルト・ディズニーとコロンビア・ピクチャーズ、3Mとノートンなどのペアが取り上げられています。これにより、成功企業がどのようにして競争を勝ち抜き、持続的な成長を実現しているのかが具体的に示されています。
『ビジョナリー・カンパニー』は、成功企業の共通点を明らかにすることで、他の企業がどのようにして同じような成功を収めることができるのかについてのヒントを提供しています。
この本は、経営者やリーダーだけでなく、ビジネスに関心のあるすべての人にとって貴重な洞察を提供してくれる一冊です。
このように、『ビジョナリー・カンパニー』は、持続的な成功を目指すための具体的な方法論と哲学を提示し、ビジネスの世界においても広く読まれ、影響を与えている名著です。
ビジネスとは一種のコミュニケーション
本書を読むと、「仕事」あるいは「ビジネス」に対するイメージが変わります。
私自身、ビジネスの恩恵を受けながらも「ビジネス=金儲け=悪」なる先入観を抱いており、「ビジネス」を毛嫌いしていたので、その心情の変化たるや自分で感ずるよりも大きなものでした。
タイトルにもある「ビジョナリー」とは先見性を意味しています。
ビジネスとは「それまでにない価値観の創造である」と考えたとき、私が忌避していた金儲けとはビジネスの一つの側面でしかなく、結果論でしかないことが分かりました。もちろん「すべての企業」に当てはまるとも言い難いのですが。
ですから、価値観の創造とは言い換えれば、他者に新しい世界を見てもらい喜ばれることであり、それこそがビジネスであり、ひいては人が生きる意味だと考えるようになりました。まさにコミュニケーションとその伝播であるといえるのではないでしょうか。
「仕事」という言葉
私はビジネスだけでなく、「仕事」という言葉も嫌いでした。偏見の塊が過ぎるように反省しますが、「仕事」という言葉には何らかのネガティブな要素があります。
「やらなくてはいけないこと」。そんな後ろ向きなトーンです。
しかし、本書を読むと「仕事」に対するイメージが変わります。仕事とは他者、ないしは見えない誰かの日常をよりよいものにできる可能性を秘めた行為だと思うようになりました。
私の父の話です。トヨタ自動車系列の会社に勤務していた父は、トヨタ車以外は車として認めていないような雰囲気がどこかでありました(もちろん他社の車をリスペクトしていました)。父は仕事を誇りに感じ、正しいことをしている実感があったのかもしれません。
トヨタはまさに「ビジョナリーカンパニー」であり、製品ではなく企業そのものが最高傑作です。100年後も素晴らしい車、それは車ではなく形を変えているのかもしれませんが、新しい価値を提供し続けてくれるように思います。父は現場でそれを実感していたのではないかと感じます。
仕事とは決してネガティブな面だけでないことを本書で学びました。信念を形にして他者に喜びを与える。きれいごとですが、これが本来の仕事だと『ビジョナリーカンパニー』を読んで感じました。
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