『でんしゃ』こどもにとってのはじめての物語(バイロン・バートン)

色鮮やかな赤い電車が、青い空の下、緑豊かな風景の中を走り抜ける——バイロン・バートンの絵本『でんしゃ』は、シンプルでありながら心躍る世界を描き出します。

この作品は、「物語」をこどもに伝える初めての一冊にぴったりです。

作品紹介

バイロン・バートンの『でんしゃ』は、1992年に出版された絵本で、子どもたちの心を捉えて離さない魅力的な作品。

シンプルな絵と文で電車の”旅”を描いたこの本は、幼い読者に大きな感動と想像力の翼を与えています。

「せんろです」という印象的な一文から始まる物語は、子どもたちの心を一瞬にして掴みます。

その後に続く赤い電車の旅は、まるで読者自身が乗車しているかのような臨場感を醸し出します。街を出発し、山や川、トンネルを通り抜け、最後に元の街に戻ってくるまでの一日の旅路は、子どもたちに小さな冒険の喜びを与えてくれます。

鮮やかな色使いと大胆な構図は、この本の大きな特徴のひとつ。

赤い電車が青い空や緑の山々を背景に走る様子は、視覚的にも非常に印象的で、子どもたちの目を釘付けにします。この色彩の対比は、幼い読者の色彩感覚を育むのにも一役買っています。

作品の特徴

こどもは電車と共に旅をしながら、様々な疑問を抱くことができます。

「電車はどこに向かっているのか?」

「電車が走っている周囲にはどんなことが起きているのか?」

このような変化を子どもと一緒に発見し、楽しむことができるのです。

シンプルな絵と文

バートンは複雑な描写を意図的に避け、必要最小限の要素で世界を表現しています。これにより、子どもたちは本質的な部分に集中しやすくなっています。

鮮やかな色使い

赤い電車を中心に、青い空、緑の山々など、コントラストの効いた色彩が特徴的です。この大胆な色使いは、子どもの視覚を刺激し、色彩感覚を養うのに役立ちます。

リズミカルな文章

短く簡潔な文が、電車の動きに合わせてリズミカルに展開します。これは、子どもの言語感覚を育むと同時に、物語の流れを理解しやすくしています。

空間認識の育成

ページをめくるごとに変化する風景が、子どもの空間認識を助けます。電車の移動に伴う風景の変化は、子どもたちに空間の概念を自然に教えてくれます。

ストーリーの構造

出発から帰還までの一連の流れが、子どもに安心感を与えます。この予測可能な構造は、子どもたちに物語の理解を深めさせ、同時に安心感をもたらします。

『でんしゃ』が子どもたちを魅了する理由

バイロン・バートンの『でんしゃ』は、世代を超えて子どもたちの心を掴み続けています。

一見シンプルな絵本でありながら、なぜこれほどまでに子どもたちを魅了するのでしょうか。その秘密は、子どもの心理と発達段階を巧みに捉えた構成にあります。分かりやすさと視覚的な魅力、想像力を刺激する要素、そして安全な冒険体験の提供など、様々な要因が絡み合って『でんしゃ』の魅力を形作っています。

分かりやすさ

単純な構造と明確な展開が、幼い子どもにも理解しやすいです。複雑な要素を排除することで、子どもたちは物語の本質を容易に把握できます。

視覚的魅力

大胆な色使いと形の単純化が、子どもの目を引きつけます。視覚的な刺激は、子どもの興味を引き出し、長時間集中させる効果があります。

想像力の刺激

最小限の情報から、子どもたちが自由に想像を膨らませられます。描かれていない部分を自由に想像することで、創造力が養われます。

冒険心の満足

安全な環境で「旅」を体験できることが、子どもの冒険心を満たします。実際に旅をしなくても、本を通じて新しい経験ができる喜びがあります。

繰り返しの楽しさ

何度読んでも飽きない構成が、子どもの好奇心を満たします。毎回新しい発見があることで、繰り返し楽しむことができます。

親子で楽しむ『でんしゃ』の読み聞かせのポイント

音の工夫

電車の音や風景の変化に合わせて、声の調子を変えてみましょう。例えば、「がたんごとん」という電車の音を実際に声に出したり、トンネルに入るときは声をひそめたりすると、より臨場感が増します。

質問を投げかける

「次はどこに行くかな?」「この動物の名前は何だろう?」など、子どもに考えさせる質問をしてみましょう。これにより、子どもの観察力と想像力が育ちます。

実生活と結びつける

実際の電車体験と結びつけて話してみるのも良いでしょう。「私たちが乗った電車もこんな風だったね」などと話すことで、子どもの理解が深まります。

ページをゆっくりめくる

子どもが絵をじっくり観察できるよう、ゆっくりページをめくりましょう。急ぎすぎると、子どもが細部を見逃してしまう可能性があります。

一緒に数える

駅や車両、動物などを一緒に数えてみるのも楽しいです。これは数の概念を学ぶ良い機会となります。

教育的観点から見る『でんしゃ』の価値

言語発達

シンプルな文章構造が、言葉の習得を助けるのではないでしょうか。

色彩感覚

鮮やかな色使いが、色の認識を促進してくれます。

数の概念

鮮やかな色使いが、色の認識を促進してくれます。基本的な色を学ぶだけでなく、色の組み合わせの美しさも感じ取ることができます。

時間の流れ

一日の流れを追うことで、時間の概念を養います。

社会認識

様々な風景や行動を通じて、社会の多様性を学べます。都会や田舎、山や海など、異なる環境があることを知ることができます。

他の交通絵本と比べて

抽象度の高さ:細部を省略し、本質的な要素のみを描いています。これにより、子どもたちは重要な部分に集中しやすくなっています。

ストーリー性:単なる乗り物の紹介ではなく、一つの旅の物語になっています。これにより、子どもたちは物語に没入しやすくなっています。

芸術性:色彩や構図に芸術的な要素が強く、視覚的な美しさがあります。これは、子どもたちの美的感覚を養うのに役立ちます。

普遍性:特定の地域や時代に縛られない、普遍的な描写をしています。そのため、世界中の子どもたちが楽しむことができます。

感想

『でんしゃ』は単なる絵本以上の価値を持つ作品であり、子どもたちの成長を多面的に支援する教育的ツールとしても高く評価されているのではないでしょうか。

親子で繰り返し楽しむことで、様々な学びと発見が得られる素晴らしい絵本だと思います。

投稿者プロフィール

セイウチ三郎(編集部)
『OLDNEWS』を発行しています。ウエブ限定のコンテンツも随時更新中です。

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