小菅正夫先生は、閉園の危機にあった旭山動物園を日本有数の人気動物園に変えたことで知られています。その過程で彼が体験した出来事や感じたことを、本書では綴っています。
小菅先生は動物たちの命や生態を観察し、その中から生きることの本質や意味を見出しています。「動物は先生である」。そんなことを考えさせてくれる一冊。
『生きる意味って何だろう? 旭山動物園園長が語る命のメッセージ』のあらすじ
動物たちの姿を通して「生きること」の喜びや苦しみ、そして命の尊さについて語られるエッセイ集。
例えば、動物園で生まれた赤ちゃん動物たちの成長を見守る中で感じた命の奇跡や、病気や事故で命を落とした動物たちに対する哀悼の念などが描かれています。
また、小菅先生は動物たちとのふれあいを通じて、命が互いに支え合っていること、人間が自然とどのように共生していくべきかについても考えを深めています。
動物たちが見せる本能的な行動や、人間には計り知れない知恵を持っていることを実感し、そのことから学ぶべき教訓を紹介しています。
教育とは
カバのオス同士の闘争は、どちらがより大きく口を開けられるかにかかっているそうです。
そのような将来に備えるべく、子カバは父カバを相手に口を開けるトレーニングを行います。
父カバは、子カバが“ぎりぎり”勝てる程度に口を開けてやり、子カバにわざと噛まれる。「良い練習相手」になってやるそうです。
子カバは「やってやったさ」とばかりに母カバに駆け寄り、父カバは母カバに「僕も頑張ったろう」と遠く目配せをする。現代から見れば、「旧時代の名残」だと見受けられるのかもしれません。それでも、ひとつの実践的な教育をそこに見ます。
高齢社会を獲得した人間
以前、小菅先生に「なぜ人間だけが高齢社会を築いたのか?」という質問をさせて頂きました。
ご返答は次の通りでした。
「長寿的な遺伝子をどこかの段階で獲得したことで、高齢の個体が育児に参加し母の負担を軽減させ、新生児の死亡率を引き下げた。その延長線上に人類の繁栄、あるいは高齢社会の成り立ちがある」
高齢社会の特筆すべき点は、「母」の負担を軽減できたことだったのではないのでしょうか。翻って高齢化社会が進行しながらも「母」の負担がより大きくなっているのは、核社会の広がりだけが原因だとは考えられません。
自戒も込めて感じていることですが、何十年と議論されている、「母親のケア」について、一人一人が具体策を持つ時代になったと思われます。私も常に自問する毎日です。
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