『HABIT 「習慣で買う」のつくり方』「習慣脳」と「判断脳」。私たちは無意識に行動する

私たちは顧客として商品やサービスを購入し、ときにマーケターとして顧客の購入活動を後押しする。いずれの立場でも私たちは論理的思考のもと、「これが良い」と思って行動していると感じている。

しかし、本書はそんな幻想を打ち砕く。私たちは無意識のうちに習慣で購入をしている。

1. 人間の購買行動を支える二つの脳

本書は、人間の購買行動を「判断脳」と「習慣脳」という二つの意識から解説しています。

  • 判断脳:意識的に情報を処理し、論理的に判断を下す脳の働き
  • 習慣脳:無意識のうちに処理を行い、日常的な行動を司る脳の働き

驚くべきことに、人間の行動の95%は習慣脳が決定しているといいます。例えば、運転しながら考え事ができるのは、習慣脳のおかげなのです。

2. マーケティングの成功の鍵

成功するマーケティングの秘訣は、以下の2段階にあります:

  1. 判断脳に訴えかけ、初回の購入を促す
  2. 習慣脳に働きかけ、継続的な購入を維持する

3. 習慣脳の影響力

習慣脳が購買を決定する段階では、消費者は必ずしも購入の理由を説明できません。これは、論理的思考を経ずに購買が行われている証拠です。

具体例:ファーストフード店の失敗

  • 状況:売上低迷を受け、ヘルシーメニューを導入
  • 結果:顧客アンケートでは好評だったが、実際の売上は伸びず
  • 理由:店内の匂いや音、注文の緊急性など、既存の習慣を呼び起こす要素が多すぎた

4. 判断脳を刺激するタイミング

新商品や新カテゴリーを導入する際は、判断脳に働きかけることが重要です。

失敗例:冷凍総菜メーカーのアイスクリーム参入

  • 問題点:既存のブランドイメージと新商品の不一致
  • 教訓:商品棚の変更だけでなく、顧客の認識を変える必要がある

成功例:「ヘルシーチョイス」ブランドの拡大

  • 成功要因:「ヘルシー」というブランドポジションを確立していたため、新カテゴリーでも顧客に受け入れられた

5. 広告の役割再考

広告は単なる認知向上ツールではなく、習慣の強化に用いるべきです。一回限りの購入で終わらせないためには、ブランドの約束を明確に伝え、継続的な関係を構築することが重要です。

実践的アドバイス

  1. 新商品導入時は、判断脳に訴えかける明確な価値提案を行う
  2. 既存商品は、習慣脳に働きかける要素(パッケージ、陳列場所など)を一貫させる
  3. ブランドの約束を明確にし、それを全てのマーケティング活動に反映させる
  4. 顧客の購買習慣を理解し、それに沿ったアプローチを取る
  5. 広告は認知だけでなく、習慣形成のツールとして活用する

この本は、消費者行動の深層を理解し、より効果的なマーケティング戦略を立てる上で貴重な洞察を提供しています。判断脳と習慣脳の概念を理解し、それぞれに適切にアプローチすることで、ブランドの長期的な成功につながるでしょう。

投稿者プロフィール

セイウチ三郎(編集部)
『OLDNEWS』を発行しています。ウエブ限定のコンテンツも随時更新中です。

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