ルース・スタイルス・ガネットによる『エルマーのぼうけん』は、1948年に出版されて以来、世界中の子どもたちと大人たちの心を捉え続けている児童文学の傑作です。
この物語は、主人公エルマー・エレベーターの冒険を通じて、友情、勇気、創意工夫の大切さを鮮やかに描き出しています。
目次
あらすじ『エルマーのぼうけん』
物語は、エルマーが野良猫と出会うところから始まります。
この出会いが、エルマーの人生を大きく変えることになります。猫から聞いた話によると、遠く離れた島で若いドラゴンが悪い動物たちに囚われ、苦役を強いられているのです。
正義感の強いエルマーは、この話を聞いて即座にドラゴンを救出する決意を固めます。
冒険の準備:一見奇妙だが実は秀逸な旅の道具
エルマーの冒険準備は、一般的な冒険物語とは一線を画しています。
彼のバックパックには、キャンディ、ゴムひも、紙袋、歯ブラシ、くし、歯磨き粉、風船など、一見すると冒険には不釣り合いに思える品々が詰め込まれています。
しかし、これらの日用品が後にエルマーの機知と相まって、危険な状況を打開する鍵となるのです。この細部への配慮が、物語に現実味と独特の魅力を与えています。
ワイルド島:知恵と勇気の試練の場
エルマーの冒険の舞台となるワイルド島は、様々な危険に満ちた場所です。ここでエルマーは、ライオン、ワニ、サイ、ゴリラなど、凶暴で狡猾な動物たちと対峙することになります。
しかし、エルマーは持ち前の知恵と創意工夫、そして勇気を武器に、次々と困難を乗り越えていきます。彼が動物たちを出し抜くシーンは、読者に爽快感と達成感を与え、思わず声援を送りたくなるほどです。
リアリティある登場人物
『エルマーのぼうけん』の魅力の一つは、登場人物たちのリアルな描写にあります。
エルマーの母親が野良猫に対して示す冷淡な態度や、ワイルド島の動物たちの意地悪な性格など、現実世界を反映したような描写が随所に見られます。
これらのキャラクターは単純な善悪の二元論では割り切れない複雑さを持ち、それゆえに読者の共感を呼び起こすのです。
登場人物紹介
エルマー
物語の主人公。9歳の少年で、知恵と勇気を持ち合わせている。
創意工夫に長け、一見役立たなそうな日用品を巧みに使いこなす。友情のために危険な冒険に乗り出す勇敢な性格の持ち主。
ボリス
エルマーが救出しようとする若いドラゴン。悪い動物たちに捕らえられ、島で苦役を強いられている。エルマーの冒険の目的であり、友情のシンボルとなる存在。
ねこ
年をとった野良猫。旅行家で、最後の旅行にみかん島へ出かけた際、立ち寄ったどうぶつ島でりゅうと知り合い、仲良くなる。どうぶつ島を出る時にりゅうに助けることを約束。
ねずみ
どうぶつ島でエルマーが最初に出会った動物。偵察役。
ワニ
ワイルド島に住む危険な動物の一人。エルマーの前に立ちはだかる障害の一つ。狡猾で凶暴だが、エルマーの機転により出し抜かれる。
ライオン
ワイルド島の動物たちのリーダー的存在。威厳があり、他の動物たちを支配している。エルマーにとって最も手ごわい敵の一人だが、最終的にはエルマーの知恵に敗れる。
ゴリラ
力が強く、エルマーの行く手を阻む動物の一人。単純だが危険な存在で、エルマーはゴリラの力と知恵比べをすることになる。
トラ
ワイルド島に住む危険な動物の一人。
速く、強く、狡猾で、エルマーにとって大きな脅威となる。エルマーの知恵と機転が試される相手の一人。
子どもの心を捉える真実の描写
『エルマーのぼうけん』は、子どもたちにとって単なるファンタジーではなく、リアルな体験として感じられる物語です。
動物たちの意地悪さや危険な状況の描写は、時に大人の目には過激に映るかもしれません。
しかし、子どもたちはこの真実味のある描写に引き込まれ、エルマーの冒険に深く共感し、自らも冒険に出たいと感じるのです。
世代を超えて愛される理由
この物語が長年にわたって愛され続けている理由は、その深い洞察と普遍的なテーマにあります。
友情の大切さ、勇気を持つことの重要性、創意工夫の力など、物語が伝えるメッセージは年齢を問わず心に響きます。また、エルマーの冒険を通じて、読者自身も成長を感じることができるのも、この物語の魅力の一つです。
感想
『エルマーのぼうけん』は、単なる子ども向けの物語ではありません。
それは、想像力と勇気が困難を乗り越える力となることを教えてくれる、普遍的な物語です。エルマーの冒険は、読者に夢と希望を与え、困難に立ち向かう勇気を育んでくれます。この物語は、これからも多くの世代に読み継がれ、感動と勇気を与え続けることでしょう。
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