友人A 2024.06.19 「小説を書こうと思う」彼はそう言うなり、黙り込んだ。「書けばいい」と僕は言ったが、彼が小説を書かないことを知っている。「どんな話を書く?」僕がそう言えば、彼は気色ばんだように答える。「まだ分からないよ。書くべきことなら山ほどあるから」僕も小説を書きたいと思うが、実際に書いたことは数
無口な父 2024.01.11 信頼少なくとも僕にとって父は無口な人だった。母も姉もそれほど無口ではないと言うが、僕は父を無口な人だと思う。家を出るまでに父から“小言”を言われたこともなければ、将来に対する要望を受けたこともない。今になれば、それが放任ではなく信頼だったと分かるが、やはり当時は距離