【あらすじと名言で読む】「007/カジノ・ロワイヤル」【原作】

スパイ小説の金字塔として知られるイアン・フレミングの『007 カジノ・ロワイヤル』は、ジェームズ・ボンドのデビュー作として、彼の原点を描きます。

緊張感あふれるカジノでの対決、結婚を考えた女性との出会い、そして彼を007たらしめる出来事――本作の魅力を深掘りしていきます。

【あらすじ】

共産党系の労働組合「アルザス労働者組合」で秘密会計を担当するル・シッフルは、組合資金を無断で私的流用した結果、巨額の損失を抱える事態に陥っていた。

英国諜報部(MI6)のエージェントであるジェームズ・ボンドは、ソ連の優秀なスパイであるル・シッフルを公然と「破滅」に追い込む任務を受ける。

ボンドの任務は、彼を嘲笑の的にして失墜させることで、共産主義者たちが支援する労働組合を破産させ、その結束を弱体化させることだった。

舞台となるのは、フランス北部に位置するロワイヤル・レゾーのカジノ。ボンドはル・シッフルとバカラでの勝負に挑む。

しかし、勝敗だけでは終わらない物語が展開される。

ボンドはスパイとしての使命と個人としての感情との間で揺れ動き、愛や裏切りに翻弄されながら、次第に「007」としての本質を深めていく姿が描かれる。

登場人物

ジェームズ・ボンド

英国秘密諜報部員の敏腕。コードネームは「007」。

趣味は自動車と美食。冷徹さと人間味の二面性を持つ。

ボンドは幸運を女のようなものだと考えていた――やさしく求愛するか、骨の髄までしゃぶりつくす相手であり、迎合したり追いかけたりする相手ではない。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫)』P70

ル・シッフル

ソ連のスパイ。45歳前後。不相応な贅沢を好むが目立つことを嫌う。性欲は旺盛。

財政危機に陥り、損失をカジノのギャンブルの儲けで「穴埋め」を狙う。

ボンドを見つめるル・シッフルの目には、一片の好奇心すら浮かんでいなかった。瞳の周囲の白目がすっかり見えているので、どことなく無感情で人形めいた雰囲気がつきまとう目立った。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P114

ヴェスパー・リンド

英国秘密諜報部S課(ソ連に関する仕事を担当するセクション)所属。

ボンドと任務を共にする女性。彼女の存在が物語に大きな影響を与える。

ボンドは目顔で問いかけた。ヴェスパーとは黄昏時の意味だね。

「いつも説明させられるから正直にいって飽きてるんだけど、わたしは夕方に生まれたの――それも両親の話では激しい嵐の夕方に。両親はそのことを名前で残したかったのね」

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P86

ルネ・マティス

ル・シッフルの打倒計画をかねてより合同で進めてきたフランス参謀本部第二局の局員

フランス参謀本部第二局との取決めで、同局の連絡要員がボンドのもとを訪ねるときにはこの偽名をつかうことになっていた。ボンドはマティスであればいいと思いながら、ドアを見つめていた。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P41

フェリックス・ライター

CIA職員。ボンドを助ける。

話の流れでライターがテキサス出身だとわかった。NATOの統合情報参謀部における自分の仕事や、多くの国の愛国者たちがあつまる寄りあい所帯で機密を保持することのむずかしさを語っているあいだ、ボンドは優秀なアメリカ人たちは気立てのいい連中であり、その大半はテキサス出身者のように思える……などと考えていた。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P77

M

ボンドの上司で英国秘密諜報部の責任者。ボンドに信頼を置く。

【名言で読む】007/カジノ・ロワイヤル

午前三時になると、カジノには煙と汗で人に吐き気を催させるにおいが立ちこめる。そのころになると、人は大勝負の賭けがもたらす魂の浸食作用――強欲と不安と神経の緊張が混ざりあったもの――に耐えられなくなり、分別に目覚め、カジノを不快に思うようになる。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P9

英国秘密情報部員のジェームズ・ボンドは、午前三時でありながらもまだプレイを続けるル・シッフルをさりげなく観察している場面から物語は始まる。

今回のターゲットとなるル・シッフルはソ連の優秀なスパイであり、フランスのアルザス地方の重工業と運送業に従事する労働者による共産党系の労働組合で秘密会計係を務めている。

同組合は、ソ連と内通し、フランス国内での破壊活動を進める可能性もあり、イギリス・フランス・アメリカで重要人物としてマークしていた。

調査を進める過程で、ル・シッフルが経済危機に陥っていることが判明した。

英国秘密情報部は、ル・シッフルの窮地を上手く利用することを計画していた。

有能と称されるル・シッフルを嘲笑の的に仕立てて破滅に追い込むことで、配下の労働組合をも破産せて悪評まみれにすることで、ソ連への内通者となり得る構成員たちの団結を失わせることができるという算段だった。

こうして英国秘密情報部は、腕のいいギャンブラーとしてボンドをカジノでル・シッフルを打ち負かすために送り出していた。

勝負を控えた日の昼時、ボンドをサポートするために英国秘密情報部S課から送り込まれたヴェスパー・リンドと顔を合わせるボンド。

ボンドはリンドの美しさに気が昂ぶり、落ち着き払ったようすに興味をかきたてられた。リンドといっしょに仕事を進められると思うと、やる気が出てくる。同時に、漠とした不安を感じもした。

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P57

あまりの美しさにボンドは官能的な感情すら覚えている。

ボンドはリンドとの会話を通じて親密さを感じ、パートナーとしてうまくことを運べそうな予感を抱いた。

ボンドと別れたヴェスパーは、同行していたマティスからボンドについて水を向けられこう答える。

「とてもハンサムな人ね。ちょっとホーギー・カーマイケルを思わせるけど、どこかしら冷酷で無慈悲なところがあるみたいで――」

『007/カジノ・ロワイヤル【白石朗訳】 ジェームズ・ボンド・シリーズ (創元推理文庫) P61

しかし、この言葉を言い終えることはなかった。

ヴェスパーたちがいる2、3メートル先で大きな窓ガラスが粉々に砕け散った! 椅子ごと吹き飛ばされるほどの猛烈な爆風が近くから襲いかかった。

この爆破事件はボンドの命を狙ったものだった。対決は既に始まっていた……。

感想

本作は、ジェームズ・ボンドが単なるエージェントから「007」という象徴的存在へと進化する物語です。

カジノでのル・シッフルとの対決は、彼の冷徹な判断力と戦略的思考を垣間見ることができます。

また、ヴェスパーとの関係は、ボンドに愛と信頼について深く考えさせます。

ジェームズ・ボンドはなぜ「プロフェッショナル」なのか。この1作目を見ずにボンドを語れません!

投稿者プロフィール

セイウチ三郎(編集部)
『OLDNEWS』を発行しています。ウエブ限定のコンテンツも随時更新中です。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP