マクドナルドを世界的企業に育てたレイ・クロック。著書『成功はゴミ箱の中に』では、彼の半生を通じて、ビジネスと人生の成功哲学を学ぶことができます。
失敗を恐れず、挑戦し続けることの重要性を本書の文章を引用しながら解説します。
目次
『成功はゴミ箱の中に』あらすじ
「マクドナルド」との出会い
ピアニスト、ペーパーカップの営業、マルチミキサーの販売代理……マクドナルド兄弟が経営する「ハンバーガーショップ」に出会ったのは52歳のとき。
マクドナルドに出会う前にして常に彼は「今以上の売上を達成するべく働く猛烈な営業マン」でした。
マルチミキサーの販売を続ける中で、ある時期からこのような注文が入るようになりました。
「カリフォルニアのサンバーナーディナーでマクドナルド兄弟が使っているのと同じマルチミキサーを一台売ってくれよ」
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
マクドナルド兄弟が運営する「マクドナルド」というレストランに興味を惹かれたレイクロックは、実際にその目で「マクドナルド」を確かめるべくロサンゼルスに飛んだ。マルチミキサーを1台だけ使用しているだけでなく、8台も所有しているというその情報だけを持って……。
「マクドナルド」の効率性に魅了されたレイクロック
その夜、モーテルに戻って、私は今日一日の出来事を思い返してみた。すると突然私の脳裏に、マクドナルドの店舗を、国中の主要道路に展開させるという考えがひらめいた。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
ハンバーガーのメニューは、「ハンバーガー」と「チーズバーガー」と最大限に絞ることで作業効率が非常に良い。さらにフライドポテトを「聖なるもの」と評するほどに崇高な念を抱き、店内外で高度に標準化されたビジネスモデルに感銘を受け、フランチャイズの可能性をレイクロックは感じることになります。
しかしこの時にはまだ、チェーン展開による店舗増でマルチミキサーの販売数が増えるという算段だった。あくまでもチェーン展開はレイ以外が担当するということを意味していた。
懐疑的なマクドナルド兄弟の兄・ディックがチェーン展開による弊害を理由にフランチャイズ権の譲渡に後ろ向きであったところ、レイクロックは身を乗り出すようにして「では、私がやりましょう‼」と言って、レイクロックのマクドナルド帝国の第一歩が踏み出された。
苦難に次ぐ、苦難
本書の多くは「苦労」の連続です。それは読んでいるだけで、動悸がするような仕事で追い詰められたときにしか感じられない腹の底からゆっくりと搾り上げられるような感覚に襲われる話が大半です。
しかし、困難に立ち向かう姿勢こそがレイクロックの真骨頂です。
だからといってくじけてはいられなかった。一度心に決めたら、必ずやり遂げるのが私の信条だ。何があっても前進あるのみ。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
これは、当時の配偶者との軋轢によって、相手への信頼を失い、心の溝を感じてしまった際の独白です。
この独白はプライベートの出来事ですが、ビジネスに対しても同様で、あらゆる困難や課題に対して妥協せずに目標を達成するレイ・クロックを見ることができます。
マクドナルド兄弟とのフランチャイズ権の契約締結後も、ピンチが幾度となく訪れますが、なぜ困難を跳ね除けられたのかは彼の精神がもたらすエネルギーからでしょう。
私たちの「日常」とも言えるマクドナルドとなるまでの軌跡が、ユーモアったぷりのエンタメ性を持って描かれています。
本書で語られるビジネスの成功哲学については、「クロックの成功哲学:具体的エピソードから学ぶ」をご覧ください。
レイ・クロックのプロフィール:52歳で人生が変わった男
レイ・クロック(Ray Kroc, 1902年10月5日 – 1984年1月14日)は、アメリカの実業家。マクドナルドを世界的なフランチャイズチェーンに成長させた立役者です。
その人生とビジネスキャリアは、挑戦と失敗を乗り越え、最終的に大成功を収めるという典型的なアメリカンドリームの象徴となっています。
主な経歴
若年期
クロックはシカゴで生まれ、若い頃から様々な職を転々としました。紙コップのセールスマンやミュージシャン、さらにはラジオでジャズピアニストとしての活躍など、いろいろなキャリアを経験しています。
マクドナルド兄弟との出会い
1954年、52歳のとき、ミルクセーキ製造機の販売員をしていたクロックは、マクドナルド兄弟が経営する小さなハンバーガー店に出会いました。彼は、その店の効率的な運営方法に感銘を受け、このビジネスモデルをフランチャイズ展開すれば成功できると確信しました。
マクドナルドの拡大
クロックはマクドナルド兄弟と契約を結び、全米規模のフランチャイズ展開を開始しました。彼の革新的なビジネス手法と徹底した品質管理が功を奏し、マクドナルドは成功を収めました。契約による多くの縛りを解除すべく、1961年には、クロックはマクドナルド兄弟から会社を買収し、完全にその運営を掌握します。
晩年
マクドナルドが世界的な成功を収める中、クロックはその後も会社の発展に尽力しました。晩年には、他の事業にも関わりつつ、慈善活動にも力を入れていました。彼の人生は、映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』で描かれています。
業績と影響
レイ・クロックは、ただの企業家ではなく、フランチャイズビジネスの概念を確立し、マクドナルドを通じて外食産業に革命をもたらしました。彼のリーダーシップと経営哲学は、現在でも多くのビジネスパーソンに影響を与えています。クロックの名言「品質、サービス、清潔さ、価値」は、今でもマクドナルドの基本理念となっています。
クロックの成功哲学:具体的エピソードから学ぶ
幸福の条件
人は誰でも、幸福になる資格があり、幸福をつかむかどうかは自分次第、これが私の信条だ
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
高度な標準化
兄弟が語ってくれたように、実際見たところ、どの工程も作業は非常に単純だ。一度、工程を自分の頭に叩き込み、後でスタッフにやり方をきちんと教えれば、誰でも言われた通りに、一つひとつの作業をこなせるようになると確信できた。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
ビジネスの成長とは「0→1」を作り上げる段階と「1→100」を行うフェーズには異なった能力が必要なのではないでしょうか。
レイ・クロックのすごいところは、0ベースの時点で100の理想形が見えていることだと感じます。もちろん、マクドナルドは既に「1」です。しかし、マクドナルドで展開した多くのサービスはこれまでになかったものです。
「0→100」を完遂できる強さと業務の標準化。人的な意味合いも含め、スケールメリットを生む天才という印象です。
仕事とは
仕事とは、その人の人生にとって、ハンバーガーの肉のような存在である。「仕事ばかりして遊ばなければ人間駄目になる」という格言があるが、私はこれには同意しない。なぜなら、私にとっては、仕事が遊びそのものだったからだ。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
ビジネスにおける先見性
私はペーパーカップ・ビジネスに手ごたえを感じていた。古い習慣さえ打ち破ることができれば必ず成功すると信じ、毎日、早朝から夕方の五時半頃まで営業に駆けずり回った。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
マクドナルド兄弟に出会うまで、ペーパーカップの営業に没頭した日々をこう振り返ります。この考え方は現代にこそ重要になることではないでしょうか。しきたりや慣習に慣れてしまうと、変化に対して億劫になります。
WEBは文字通り、高度化されたクモの巣です。レイ・クロックの営業スタイルは上等なWEBのシステムのように洗練された管理方法を感じます。
セールスパーソンにとっての仕事とは
私の仕事は、顧客の売り上げを伸ばすことで、顧客の利益を奪うことではない。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
この一言にレイ・クロックの哲学が凝縮されています。仕事の第一優先は会社の利益です。利益がなければ、そもそも雇用されません。
逆説的に聞こえますが、売上を伸ばすためには顧客があってこそです。
レイ・クロックの睡眠法
まず頭の中に黒板をイメージする。緊急のメッセージで埋め尽くされているが、黒板消しを持った手が、それを端から消してきれいにしていく。頭の中をこれで空っぽにした。途中で雑念が生まれたら、大きくなる前に消し去った。次に、身体をリラックスさせた。首の後ろから下がっていき、背中、肩、腕、足、そして指先まで。終わる頃には深い眠りについていた。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
さらにレイ・クロックは、この作業を慣れるに従い短時間で行えるようになったと書いている。ここにもマクドナルドの哲学に通じる精神性があるのではないでしょうか。
第一に信念を曲げない。実施することを決めたら、それを問題なく実施できるように続けていく。
第二に、結果から逆算すること。すぐに眠りにつく方法を編み出すというアプローチではなく、疲労を翌日に残さないために必要なことは質の高い睡眠である、という目的に沿ったアプローチであることが重要です。
これが「質の高い睡眠」のためではなく、一段高い目標設定とともにアレンジすることがレイ
・クロックの強みなのではないでしょうか。このようなことがあらゆることに反映されています。
完璧さを求める姿勢とは
人には取るに足りないように思えることの一つひとつが、私には見逃せない重大なミスだった。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
この言葉は、レイ・クロックによるマクドナルド第一号店であるデスプレーンズ(地名)店で店長を務めるエドが、ネオンを付け忘れていたり、駐車場にゴミが散乱しているのを目にした際にカンカンになって怒ったことを振り返るようにして書かれている。
その完璧さを求める姿勢こそが、マクドナルドの高水準で標準化されている理由です。裏を返せば、ほころびは大きくなることを前提にビジネスを組み立てているということでもあります。さらに第一号店ということもあったと思われます。
成功哲学
競争相手のすべてを知りたければゴミ箱の中を調べればいい。知りたいものは全部転がっている。
「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社)
レイ・クロックは、深夜二時に競争相手のゴミ箱を漁り、肉やパンをどれほど消費したかを調べたことは一度や二度ではないという。
一方で、競争店からのスパイ行為や模倣に対しては、「脳内までは盗めない。だから彼らには一マイル半の距離を残しておいてやる」(「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社))という言葉も残している。
ゴミ箱の話は、私にとっては「脳内までは盗めない」ということの裏付けのために語られた言葉であるように感じられます。スパイ行為で得られた情報(あるいはそのお店の繁盛ぶりを示すバロメーター)にはそれほどの意味はなく、そこに至る過程と結果に対する考察、将来的なプランニングこそが全うするべきビジネスの本質である、と。
アイロニカルなタイトルだと私は本書を通じて感じてしまいます。
まとめ
レイ・クロックの教えを自分の人生に活かす
『成功はゴミ箱の中に』は単なるビジネス書ではありません。人生における挑戦と成功の本質を教えてくれる、まさに人生の指南書です。
失敗を恐れず、挑戦し続けることの大切さ。年齢に関係なく、新たなキャリアにチャレンジできる可能性。継続的な学習と適応の重要性。チームワークと人材活用の価値。
様々なことを吸収できます。しかしながら、吸収するだけでなく、知識を使うために必要なことは信念です。それこそが本書で語られる最も重要なことなのではないでしょうか。
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